膠原病とその治療法

膠原病SLEの妊娠・出産Q&A

【難病でも妊娠・出産は可能です】
癌、糖尿病、生活習慣病、その他の慢性疾患は増加の一途にあります。各疾患とも男女両性がほぼ同等に罹患します。しかしながら孕妊期の女性にとっては二重の荷重となります。女性の病人が妊娠し出産するということは筋書きのないドラマと言えるでしょう。ここでは膠原病の一種である全身性エリテマトーデス(SLE)のケースで考えてみます。というのはこの病気は圧倒的に若い女性に発病するからです。また、私は診察室でしばしば「服薬治療中ですが、妊娠出産は可能でしょうか?」との質問を受けます。
本日はそれにお答え致します。 治療中でも妊娠出産は可能です。但し、一定の条件の下、御本人、御家族の御希望を産科医と内科医の綿密な連携の下、妊娠管理が厳重に遂行されます。まず一定の条件を述べます。

1. 病気の活動性が低下していることです。発熱、関節痛、皮膚症状等がなく、検査結果でも落ち着いていることが第一の条件です。年齢は考慮されますが、罹病期間は問いません。
2. 重篤な臓器障害がないことです。即ち、ネフローゼ症候群とか、腎不全とか高血圧とか貧血を合併していると、妊娠出産は慎重に対処せざるをえません。
3. 副腎皮質ホルモン剤(プレドニゾロン)を維持量10mg/日 程度の服用であれば、副作用もなく、胎児への影響もありません。多量服用中の時や、免疫抑制剤を併用している時は避けなければなりません。
4. 産婦人科的に異常なく、懐妊可能であることです。

次に妊娠後の経過を述べます。

1. 母子とも順調
何事もなく満期安産で経過し、母子とも順調に経過します。即ち、胎児は順調に成長し、無事誕生し五体満足でこの世に生を亨けます。母親は必要最少限のプレドニゾロン服用で病気の悪化や合併症もありません。
2. 母親順調ながら子供は不調
母体は健全ながら、流死産が多いのも事実です。原因不明の流死産が多いのですが原因が解明されつつあります。そのひとつとして習慣性流死産の原因として胎盤内の血栓形成による胎盤梗塞があります。この病気は抗リン脂質抗体症候群と呼ばれ、血液が凝固し易く血栓を形成する稀な病気ですが最近注目されております。
3. 母親は不調ながら子供は順調
妊娠出産は母体にとり、大きなストレスです。妊娠という荷重が、病気を悪化させる場合があります。又妊娠中毒症等他の病気を合併する事があります。その時は母体の治療を優先させつつ、胎児は時期が許す限り、早期出産となります。最も困難なケースですが、内科医、産科医、小児科医の綿密な連携により懸命に支えます。
4. 母子とも不調
懸命な治療にもかかわらず、症状が妊娠継続不可能なほど悪化すれば、母体の治療を優先し、人工流産あるいは帝切による早期出産もやむをえない場合もあります。即ち、母親の病気は悪化再然し、新たな合併症も残し、残念ながら胎児は死亡する場合もあります。

かくして生きる者と死ぬる者の壮絶なドラマは完結します。その際、医師は単なる傍観者ではありません。高度な医療技術を駆使し、実践する強力なサポーター(支援する専門集団)であります。と同時に医療チームの指揮者でもあります。
以上想定しうる経過を述べましたが、ケースバイケースで1、2、3、4以外にもその組み合わせにより、微妙な経過を取りうる可能性もあります。ちなみに当院でのこの12年間の実績では1が80%、2が10%、3が10%、4が0%でした。
最後に母子とも順調な経過を取って3名の子供の母親になった方の心情を御紹介します。

「この子供達のためにも、病気に負けることなく、長生きをしよう!!」という使命感で病気を克服しております。
以上、述べました趣旨は第50回日本リウマチ学会総会(4月)及び第102回沖縄県医師会医学会総会(6月)で詳しく発表しました。
おおうらクリニック 大浦 孝
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